私は以前、不妊専門クリニックの受付で、医療事務として働いていました。
患者様と接する機会も多い仕事ですし、クリニックの性質上、妊娠につながらない方、流産など妊娠しても継続しない方等を、毎日毎日多く目にしてきました。
辛そうなお顔をなさっている方や、精神的にも肉体的にも金銭的にも辛そうな患者様も多いですし、また、最終的に妊娠につながらず、涙ながらに治療を終える患者様も、もちろんいらっしゃいます。
しかしその中でも、やりがいや、うれしさを感じる時は当然あります。
特に、長い間治療してきた患者様や、様々な治療を試された患者様が、
妊娠判定が出た時や心拍を確認された時の本当にうれしそうなお顔を見たとき、
ありがとうございますとお声をかけていただいた時、
出産ができる産院へ通うために、当院を卒業なさる時
には、本当にやりがいを感じます。
心の底からよかったなぁと思うことができます。
お腹の中の命の誕生を目にする感動もありますし、こちらももらい泣きしてしまいそうになる時もあります。
治療と言っても、治る治らないという治療ではないので、終わりは見えません。
辛い時もたくさんあったと思います。
たくさん悩んでいらっしゃった患者様があきらめずに治療し続けた上での念願の妊娠なので、患者様にとっても、医師にとっても、スタッフにとっても喜びは一入です。
命の大切さを実感します。
そしてさらにうれしいのは、出産の報告のお手紙を頂戴した時です。
中には残念ながら卒業なさった後に流産してしまって、当院に戻って再び治療を再開する患者様もいらっしゃいます。
しかし、出産報告のお手紙を頂けるということは、無事に出産まで至ったということで、そのことに対する喜びがあります。
また、育児で忙しい中でも喜びや幸せ、充実感にあふれた文章のお手紙で、こちらも幸せな気分になります。
そのため、職員の部屋に一定期間掲示しているのですが、職員一同必ず目を通し、よかったよねと話をしています。
また、医療事務は、医師や看護師や培養士ではないので、患者様にとってはそんなに重要な相手ではないと思うのですが、中には受付に対してお褒めの言葉をくださったり、ねぎらいの言葉をくださる患者様がいらっしゃいます。
患者様にとってはたわいもない会話の一つなのかもしれませんが、辛いことも多い現場なので、そういった些細なことでもとてもうれしく思いますし、仕事を続けられる要因の一つにつながっているのだと思います。
・このエピソードをお寄せいただいた方
性別:女性
年齢:30代
お住まい:海外(当時は東京)
ご職業:医療事務、受付など
勤務施設:不妊専門クリニック
エピソードをお寄せいただき、ありがとうございました!