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医療・介護職のやりがい・ありがとうエピソード集

言語聴覚士は、嚥下のリハビリや、頭のリハビリ以外にも、人の心に耳を傾ける、患者の支えになる存在なのだなと思いました。

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脳の病気から回復する途中のリハビリの話を書きたいと思います。


ほぼ病室で横になっているばかりの入院生活でリハビリは、大変でもあり、楽しみでもありました。


その中でいちばん楽しみだったのが、言語聴覚士による頭のリハビリです。


回復してきて最初の方はまだ歩くこともできなかったため、車いすで移動してリハビリの部屋に移動します。


その部屋では絵に描いてある図形と同じ形を作るパズルをしたり、絵を見せられてその絵のおかしなところを探して指摘する、足し算引き算などの作業をします。


作業というよりは、勉強に近いかもしれません。

 

最初の頃は、パズルは全然できないし、絵もよくわからない。

 

計算もまったくできない。

 

「私は最初からこういうことは苦手なんだ!!」とふてくされたりしました。


言語聴覚士の先生のすごいところは、まったく否定しないところだと思います。


仕事だからなのかもしれませんが、ゆっくりと、確実に、できなかったことはまた後日やってみよう、というスタンスでした。


リハビリ以外にもたくさん話を聞いてもらいました。


入院中、体がある程度動かせるようになってから、私は日記をつけていました。


その日記をリハビリのために読んでもらっていたのですが、ある日、その日記を読んで先生は言いました。


「家族に素直になれないんだね」と。


驚きました。

 

私は、本当は素直になれないのに、いつも嘘をついて自分の気持ちを押し殺して生きていたからです。


私の殴り書きの日記を読んで、そのことに気づいてくれたのが嬉しくて、涙があふれました。


言いたいことを言えない、いい顔ばかりして生きていた私の気持ちにすぐ気づいてくれたことに驚きました。

 

「あれが辛い」

「これが辛い」

「こういうことができない」
「でも退院したらこういうことをやっていきたい」

「この先はこういう風にいきていきたい」

 

今まで言えなかったこと、できなかったこと、これからどうやって生きていきたいかということ。


誰にも話さないような話をたくさん聞いてもらいました。


脳の病気をしたあとの心は、とても不安定でした。

 

寝たり起きたりを繰り返して、常に頭がぼんやりしているため、治療をされていても攻撃されていると感じてしまったり、幻覚が見えたりしました。

 

怖い夢も続きました。


私は自分が病気になるまで「言語聴覚士」という存在を知りませんでした。


嚥下のリハビリや、頭のリハビリ以外にも、人の心に耳を傾ける、患者の支えになる存在なのだなと思いました。


最初は難しいパズルや、絵のリハビリをしたり、とにかく頭を使うことをすると、大パニックを起こして、大汗をかいていたのですが、
毎日、いろいろな話に耳を傾けてもらい、少しづつリハビリを進めてもらうにつれて、大パニックを起こす回数もかなり減りました。


毎日少しづつ、脳が起きてくるのを実感しました。

 

一時期は「病気が治っても、頭は一生完全には戻らないのではないか」と思っていました。


少しづつ戻っているのを実感したとき、「もしかしたら戻るかもしれない」とはじめて希望が生まれました。

 

あと、とても印象的だったのは、私を担当してくださった先生は、私の言うことをとてもおもしろがってくれました。


どうやら私は、考え方が人と違うらしく、問題を出されるととんでもない回答をするようで、
それを否定せず、おもしろがってくれるのが、とても嬉しかったです。


最初は文字もろくに書けませんでしたが、頭が起きてきて、自分の考えに少し自信を持てるようになって、日記が書けるようになり、少しづつ考えられることも増えました。


パズルや、絵の間違い探しも、時間をあけてまたやると、以前できなかったことができるようになっていました。


身体が回復してきても、心や頭の回復がなかなか追いつかず、不安だったのですが、
リハビリを続けるにつれて、退院したあとの生活にも、自信がついてきました。


私の得意なことを認めて、褒めてくれたため、元気になって、退院したらやりたいことも、先生のおかげで明確に考えられるようになりました。


病気になったら、「できないこと」の方が増えそうなものなのに、私はこのリハビリで、「できること」「やってみたいこと」がたくさん増えました。

 

私は今、どういう形になるかはわからないけれど、「自分の経験を生かして、人に力を与えられる生き方」をしたいと思っています。

 

そう考えられるようになったのは、病気になったことと、リハビリを頑張って、自分という人間と認めてもらい、自分という人間と向き合って、自分に正直に生きることができるようになったからだと思います。

 

ここで言語聴覚士の先生と出会っていなければ、自分を否定されることを恐れて、
言いたいことややりたいことを自分の中に閉じ込めたまま生きていたかもしれません。

 

私が私として、向き合って生きていくこと、
同時に「人の考えを否定しないこと」「人の心に耳を傾けることの大切さ」も教えてもらいました。

 

自分が病気になったこと、言語聴覚士の先生との出会いは、今後の人生へのプラスになりました。

 

治療が辛く、ベッドに横になってばかりの入院生活を
楽しいものにして頂けたこと。


今後の人生への指針を頂けたこと。


自分自身と向き合う時間を頂けたこと。


とても感謝をしています。

 

病気や入院、できれば経験しないで人生を送れた方が幸せだと思います。

 

しかし、病気になったからには、この経験を生かして生きて行こう。そう思えたのは、間違いなくこの経験と出会いのおかげだと思います。


病気になったことはとても苦しくて、治療も辛かったですが、自分の中に残せたもの、新しく生まれたものがたくさんあるのは、言語聴覚士の先生との出会いがあったからだと思っています。

 

ちなみにここでの出会いで、言語聴覚士ってなんて素敵な仕事なんだろう!と思い、
一瞬、「私も言語聴覚士になりたい!!」と思ったのですが…


調べてみたら、私にはとてつもなく難しそうで保留にしました。

 

一瞬本気で考えて、資格の取り方やら学校やら調べてみたのですが…。


私は私で、別の形で、誰かに笑顔や元気を届けられるような生き方をしていきたいと思います。


私も希望を与えられる存在になりたい、大人になってからそう思えたことは、私の財産になりました。

 

・このエピソードをお寄せいただいた方

性別:女性

年齢:30代

お住まい:東京都杉並区

感謝を伝えたい方:言語聴覚士の先生

 

言語聴覚士さんとのエピソードをお寄せいただき、ありがとうございました!