ここぴたる!

医療・介護職のやりがい・ありがとうエピソード集

医師の先生に「腎臓が一つなくなったのはショックでしょう。けれど、言葉は悪いかもしれませんが、腎臓でよかったんです。」と言っていただき、姉はそれからしっかり顔を上げ、希望を抱き、またいつもの気丈な姉に戻って行きました。

f:id:cocopital:20180810214750j:plain


今から、5年前の話です。


私には、二つ年上の姉がいます。

 

幼い頃は喧嘩ばかり、大っ嫌いな姉でしたが、歳をとるにつれて、姉妹というのは仲が良くなるようで、今は姉が大好きです。

 

仲の悪かった子供時代ではありましたが、姉の気丈さに尊敬もしていたし、姉のように強くたくましく生きていきたいと、子供心に思っていました。


姉が結婚した歳に、私も結婚をし、偶然にも、姉が出産する頃に、わたしも出産をしました。

 

お互い同じ年の子供を二人ずつ持つことになったのです。

 

初めての子育て、一人よりも二人でこなすのは本当にありがたく、あーでもない、こーでもない、わたしの場合はこうよ、とか、それはこうしたらいいよ、など、本当に心強い存在でした。


そんなこんなで、お互い、二人目の出産を終えました。

 

姉は正社員をつづけていましたので、産休育休を終え、社会復帰前に人間ドックをうけました。

 

その時のことは今でも鮮明に覚えています。

 

姉から一通のメールがきました。


「腎臓に何か見つかった…何だろう。」

 

姉は、あまり専門知識がないため、そんなに不安には思ってはいなかったようですが、私は調べれば調べるほど、ものすごく怖くなりました。

 

姉を失うかもしれない…怖い。

 

その気持ちはどんどん膨らみました。


その後、人間ドックの結果を元に、姉は総合病院で精密検査をうけました。


「とても大きな腫瘍がある、それは良性か悪性か今の所わからない…」


それが、検査結果でした。

 

腎臓にできた悪性腫瘍は生存率が極めて低い。

 

どこを見ても、何を調べてもそう書いてありました。

 

どうにかしたい、姉を失いたくない、その一心に、知り合いを手当たり次第あたりました。

 

幸い、友達に医療関係者が多く、県内でも有名で腕の良い医師にまでたどり着くことができました。

 

姉は、その医師の診察をうけることができました。


「おそらく、この若さだし、女性の悪性腫瘍はかなり稀だから、良性の腫瘍であるとは思うんだけど、開けてみないとやはりわからないんだよね。もし良性でも癌化したらいなくないから、腫瘍はちゃんととってから健康な腎臓は残す予定で手術しますね。けれど、もしも悪性の場合、腎臓をそのまま除去することも頭に入れておいてください。」

 

姉はそう説明を受けていました。

 

手術の日になりました。

 

私はできるだけ、平常心を保ちながら、姉のそばにいました。

 

いつも気丈に振る舞う姉ですが、この日ばかりは不安を隠せず、とても複雑な表情でベッドに座っていました。


「大丈夫よ。ねむって気がついたらもうお部屋に帰っているよ。」


そう私が言うと、姉は神妙な顔つきで、


「もし、私が帰ってこれなかったら、〇〇と〇〇(二人の子供の名前)を頼むね。あなたにしか頼れないから、本当にお願いね。」


と泣き始めました。

 

いつも人前で泣いたことなどない、負けん気の強い、私の大好きな姉。

 

相当な覚悟だったのだと思います。

 

わたしは、
「なにゆーとるんね。あの子達には姉ちゃんがおらんとだめじゃろ、しっかりしなきゃ!」
いつの間にか、姉妹の立場が入れ替わるような雰囲気になっていました。

 

しばらくして、手術の時間がきました。姉は手術室に運ばれていきましたが、手術の途中、医師に家族が呼ばれました。


「残念ながら、腫瘍は悪性でした。ガン細胞が転移しないように、腎臓を摘出します。手術後の体の負担が少ないように、開腹はしない方向でやります。医師として最前をつくします。」


医師は口を一文字にクッと結び、また、手術室にもどりました。


私たちは祈るしかありません。私たちの祈りは通じたのだと思います。

 

手術は無事に成功しました。

 

しかし、姉はまだ知りません。


「わたしの腎臓はどうなった?」


目を覚ました姉が最初に口に出した言葉でした。

 

母としばらくは言わないでおこうと、口裏を合わせる約束をしましたが、あまりに姉が気にしていたので、本当のことを話しました。

 

本当のことを知った姉は、口を閉ざしたまま、下を向き、しばらく誰とも口をききませんでした。


医師が別の手術を終え、姉のところに来て、すべての事実を詳細に話しました。


「確かに、腎臓が一つなくなったのはショックでしょう。けれど、言葉は悪いかもしれませんが、腎臓でよかったんです。知っての通り、人間には腎臓が二つあるんです。何故腎臓は二つあるとおもいますか?人間にとって二つある機能はどこだと思いますか?目や耳、手足、左脳に右脳、肺、腎臓、実はこれ、人間が生きる上で究極に大事な部分なんですよ。例えば一つ失っても、生命が維持できるように、神様が用意してくれた器官なんです。どうか、人間の力を信じてください。あなたのもう片方の腎臓はあなたを精一杯守ってくれるはずです。とても研ぎ澄まされた、優秀な腎臓になりますよ。大丈夫、大切にしていきましょう。それにこれを機にあなたは、ちゃんと定期的な検査を受け続けることになります。考え方を少し変えてみてください。何も検査をうけずに、手遅れになってくる患者さんは、今もたくさんいらっしゃる状況で、あなたは定期的にきちんとした検査がうけれるんですよ。手遅れになることは今後は絶対にないとおもいませんか?」


それを聞いて、なるほどもっともだなあ、と私は感心しました。

 

確かに癌になっ他のは辛いことだけれど、もはや癌は二人に一人はかかる病気といわれています。

 

発見が遅くなることが、一番怖い病気です。


その医師の言葉を聞いて、姉もその通りだと、納得したのだと思います。

 

泣いてばかりいた姉でしたが、それからは、しっかり顔を上げ、希望を抱き、またいつもの気丈な姉に戻って行きました。

 

いまでは、子供達と元気に走り回り、旅行にもたくさん出かけ、子供達と自分のために拾った命を全開に謳歌している姉です。


姉の生命を救い、姉の心を前向きに真摯に向き合ってくれた、プロフェッショナルな医師に私は頭が上がりません。

 

素晴らしい医療者との出会いはある意味、運が大きいといまでも私は思います。

 

けれど、姉の体験を通して、私自身もちゃんと検診を受けたり、食事に気をつけたり、そして、私も姉のようにしっかりこれからも生きていきたい!と改めて思う日々です。

 

・このエピソードをお寄せいただいた方

性別:女性

年齢:40代

お住まい:広島県広島市

感謝を伝えたい方:医師

 

エピソードをお寄せいただき、ありがとうございました!