私は若いころからずっと胃がとても弱い体質で、胃薬も手放せず、しょっちゅう消化器科のお世話になっていました。
おまけにとてもえずきやすく、健康診断でバリウムを飲むのも困難で、人の倍以上の時間を掛けなければならないほどでした。
それでも検査は毎年受けないといけないと言われていたので、誰かに
『〇〇病院の先生は胃カメラがとても上手よ』
と言われればすぐにその病院に行き、それでもつらくてまた別の病院の評判を聞くとそこで検査を受けて…というのを何年も繰り返していました。
でも、どんなに評判の良い病院でも私にとっては毎回とてもつらく、一度も楽に胃カメラを飲むことはできませんでした。
あるとき
『口から入れるのが無理な人でも、鼻から入れるならとても楽に検査が出来るらしい』
という話を聞き、さっそく鼻から出来る病院を探して検査を受けました。
検査前、私が
『どんなに腕が良いといわれている病院でも、今まで一度も楽に検査を受けられたことがないんです。』
と言うと、医師の先生は
『口から入れるよりも、数段楽に検査を受けることが出来るはずですよ。みなさんそうおっしゃいます。』
と言っていらしたのでとても期待していたのですが、残念ながら結局は口から入れるのと変わらないほどの苦痛でした。
でも、今までと違っていたのは、検査中にずっとえずいていた私の手を握って背中をさすりながら
『うんうん、つらいね。でももうすぐ終わりますからね。大丈夫。もうちょっとよ。頑張ってる頑張ってる』
と何度も励ましてくださった看護師さんの存在でした。
それまで何回も検査を受けてきたけれど、そんな優しい言葉をかけてもらったことなど一度もありませんでした。
そして検査後に先生の説明を受けて
『あなたは嘔吐反射が人よりも激しいんだね。かわいそうに今までとてもつらかったでしょう?』
『まだやっている病院は少ないけれど、今は眠っている間に出来る無痛胃カメラというものもあるから、今度からそういうところを探して検査を受けるといいよ。』
『わざわざつらい思いをして受ける必要なんてないんだからね。どうせ受けるなら楽な方がいいに決まっているんだから。』
という優しい言葉を聞いたとき、思わず泣いてしまうほど嬉しかったのです。
私は無痛胃カメラの存在など知りませんでしたし、自分の所ではやっていないので探してごらんなさいだなんて、そんな自分の病院の患者が減るようなことは普通なら言えないのではないでしょうか。
その後は、先生のアドバイス通り無痛胃カメラを実施している病院を探して、毎年検査を受けています。
初めて無痛胃カメラの検査を受けたときは
『今までの苦労はいったいなんだったんだろう???』
と思うくらいあっという間に終わり、その存在を知らなかった私に無痛胃カメラを教えて下さった医師の先生にとても感謝しました。
アドバイスをくださった病院には、自宅から少し離れていることもあり、その後一度も行っていませんが、年に数回車で病院の前を通ることがあります。
私はそのたびに無痛胃カメラの話を思い出してはあの時の医師の先生と優しくしてくださった看護師さんに心の中で「ありがとうございました」とつぶやくのです。
そして、もしかして先生が優しすぎて患者さんが減ってしまうのでは??
と勝手に心配しては、病院の駐車場の周りを一周して、車が駐まっていることを確認しては「ああよかった。ちゃんと患者さんがいる。」と安心しています。
この話はもう7年くらい前の話で、当時の医師の先生も看護師さんもだいぶご高齢でいらしたので、もしかしたらすでにリタイヤされてるかもしれないです。
また、たった一度検査を受けただけの私のことなど、覚えてはいらっしゃらないと思いますが、このエピソードを書きながら改めて感謝の気持ちを伝えたくなりました。
あの時は本当にありがとうございました!
・このエピソードをお寄せいただいた方
性別:女性
年齢:50代
お住まい:千葉県船橋市
感謝を伝えたい方:消化器科の医師の先生、看護師さん
エピソードをお寄せいただき、ありがとうございました!