私が18歳の時でした。音楽系の大学に通っていたため、その日は大学の遠征演奏会があり、田舎へ巡業に行っていたためホテルに宿泊していました。
皆で食事を終えて、若さゆえ、調子に乗って数人の友人たちと鬼ごっこをして廊下を走ったあと、友人に顔と腕を蚊にさされていると指摘され、ふと腕を見るとみるみるうちに蕁麻疹が全身に広がり、呼吸困難となりました。
あまり記憶はないのですが、病院に運ばれ応急処置をしていただき、その時は原因も分からないまま数時間後には回復し、ホテルに戻っていました。
それからしばらくは何もなかったのですが、23歳の時、バドミントンをしている際に、やはり上記と同じような指摘(蚊にさされている)を同僚から受け、気づいた時には蕁麻疹が全身に広がり、その時も呼吸困難に陥りました。
その時の医師から、19歳の時と状況として何が同じか、と聞かれ、運動したことで身体に熱を持っていたという点しか見つからず、結局その時もはっきりした原因や診断はつきませんでした。
それから、自分なりに運動することによって、このようなアレルギー症状が起こるのでは、と推測し毎日ビクビクしながら生活を送っていました。
数年が立ち、私は音楽の仕事を辞め、看護学校に通い看護師となりました。
私の抱えるよく分からない症状は、2人の医師に診てもらっても分からなかったのだから、と誰にも相談できず、ただ運動を控えて毎日過ごしていました。
ただ、19歳と23歳の時に経験した呼吸困難まで陥る症状は出なかったものの、度々、尋常じゃない痛みを伴う腹痛と、左眼瞼のみが痒くなり、気づけばお岩さんのように腫れ上がる、ということが幾度もありました。
その症状は、ほぼ休日の日になっていたため、仕事に穴を開けることはなかったのですが、看護師となって数ヶ月後のある夜、夜勤の際にその症状が突然出てしまったのです。
その時は、腹痛と共に下血もあり、左眼瞼も腫れひどくなってしまったのですが、当直の医師の処置でそれ以上ひどくなることはなく、数時間で嘘のように元に戻りました。
その経緯により、下血したこともあったため、大腸検査を受けましたが、その時には問題なし。
しかし、その時に担当していただいた消化器科の医師が、これはちゃんと調べた方が良いと言ってくださり、色々な文献を調べてくれました。
私のようなアレルギーの場合は、入院しなければ分からないことが多いのですが、その医師は、私のこれまでの症状と様々な症例を鑑みて、診断名をつけてくださいました。
「ちょっと病名は分からないですね」と簡単に言うのではなく、忙しい中、一人の患者のために調べてくださった労力と、丁寧でちゃんと私が納得、理解できるよう説明していただいた医師の姿に、これこそ本当の医師だなと痛感しました。
その医師は、間も無くして独立して遠方で開業なさったため、もう10年以上お会いできていませんが、あのとき、あの医師と出会わなければ、私はいまだに原因がわからないまま、おびえながら暮らしていたかもしれません。
残念ながら、私のアレルギーは治るものではないのですが、あのような症状を起こさないように毎日欠かさず薬を飲み、いざという時に使う注射も常備し、万全に備えて暮らしています。
同じような状況のような感じもしますが、私の中では世界が変わりました。
あのとき、医師にちゃんとお礼が言えたか記憶がありませんが、もしお会いできるのであればもう一度お礼を言いたいです。
そして、私は看護師という医師とはまた違った役割がありますが、立場は違ってもその医師のように患者さんに心から喜んでもらえるような看護を、これからも心がけて行っていきたいと思います。
・このエピソードをお寄せいただいた方
性別:女性
年齢:40代
お住まい:東京都世田谷区
ご職業:看護師
感謝を伝えたい方:医師
エピソードをお寄せいただき、ありがとうございました!