母の姉の旦那さんは、脳腫瘍がみつかり、脳腫瘍を専門的に治療できる病院に入院することになりました。
脳腫瘍の位置が手術できるところではないとのことで、内服と抗がん剤治療しかできることはないと言われたそうです。
本人は腫瘍が意識をつかさどる中枢を圧迫していたため、ほとんど反応はなくたまに目を開けるぐらいでした。
それでも、お姉さんは毎日病院に通い、手を握って今日の出来事や子供の話をしたそうです。
治療法が限られた中、不安や絶望感でいっぱいだったお姉さんに、その日担当だった看護師さんは、
『一緒にご主人の歯磨きをしてみませんか?』
と声をかけたくれたそうです。
その時、人工呼吸器という器械が繋がれていて、お口から管が入っていて、いつもは看護師さん2人がかりで歯磨きをやっていたそうです。
お姉さんは少し戸惑いましたが、看護師さんの提案に賛成し、一緒に歯磨きをしました。
歯磨きを終えると、旦那さんがあくびをしたそうです。
その時看護師さんが
『あくびをしてるところ初めて見ました。奥さんがしてくれたのが気持ちよかったんでしょうね』
と言ってくれたそうです。
嬉しいことなのかよくわからなかったが、自分にでもできることを見出してくれたことに、嬉しさと感謝の気持ちでいっぱいになったそうです。
それからというと、何かある時には奥さんが来るのを待って一緒に手を洗ったり、体を拭いたり、時にはベットの上で髪の毛を洗ったこともあるそうです。
髪の毛を洗った後、旦那さんが目を閉じたまた涙を流したそうです。
お姉さんはたまたまと思っていましたが、看護師さんは
『聴覚は最後まで残ると言われています。奥さんの声が聞こえたんですね』
と言ってくれたそうです。
何もできないと決めつけていたのは自分で、自分にしかできないことを見つけてくれた看護師さんに、感謝の気持ちでいっぱいになったそうです。
今までお姉さんは、看護師さんは点滴をしたり、採血をしたり、私たちができないことを行うものだとばかり思っていましたが、今回の入院でそれは間違いだったと気づくことが出来たと言います。
そういう家族や患者に寄り添える看護師さんもいるんだということを改めて実感し、看護師という仕事に尊敬を持ったそうです。
旦那さんは、集中治療室での治療を終えると、一般病棟へ上がることになったそうです。
その際、お姉さんが『ありがとうございました』と伝えると、
『こちらこそ沢山のことを教えていただきありがとうございました』
と看護師さんの方から、感謝の言葉を言われたと聞きました。
いろんな病院があって、いろんな先生がいて、いろんな看護師さんがいます。
その中でこの病院に入って、この集中治療室で治療を受けて、そして看護師さんに出会うことができたのは、運命じゃないかと言っていました。
どうしても怖いという印象を与えてしまう看護師さんのお仕事ですが、命や責任が何倍もある中でのお仕事なので、それはしょうがないのかもしれないと思ったそうです。
しかし、今回のように、そのような状況下でも、患者さんだけでなく家族にも目を向けられる人もいるという安心感を持てたと言っていました。
ドラマで見るようなことは稀だと思っていましたが、そうじゃないんだなっとも思ったそうです。
その看護師さんと出会ったことで、お姉さんは考え方も前向きになり、毎日病院に行くのが楽しみだと言っていました。
また、もし生まれ変わったら看護師さんになりたいとも思ったそうです。
私も今看護師を目指して専門学校に行っています。
お姉さんからこの話を聞いて、更に看護師への憧れと、私もそういう看護師になりたいという目標ができました。
・このエピソードをお寄せいただいた方
性別:女性
年齢:20代
お住まい:福岡県北九州市
感謝を伝えたい方:看護師
看護師さんとのエピソードをお寄せいただき、ありがとうございました!