ここぴたる!

医療・介護職の「ありがとう」エピソード集

【最後の入浴介助】患者さんは 「気持ちが良い…気持ちが良い…ありがとうね」 と笑顔で言ってくれました。看護師の私たちは思わず涙がこぼれました

f:id:cocopital:20180822121628j:plain

私はその時、看護師1年目でした。

 

配属された病棟には、前立腺癌の末期の高齢の患者さんが入院していました。

 

昔気質の頑固なおじいさんで口数も少なく、いつも黙ってベッドの上で天井を眺めていました。

 

でも、新人の私が点滴を持ってお部屋に行くと、注射の下手くそな私に快く手を出してくれ、失敗して謝る私に言葉はなくても、笑顔を返してくれる患者さんでした。

 

私がその患者さんに出会って半年ほど過ぎたころ、その患者さんの症状に変化が出始めました。

 

痛みです。

 

骨に転移が見つかり、転移した部分の痛みは想像を絶するものだったと思います。

 

その当時は医療用麻薬もありましたが、今のようにその使用方法が確立されておらず、十分な鎮痛が得られてはいませんでした。

 

痛みのせいでますます表情が硬くなり、食事も取れなくなり、みるみるうちに痩せていき笑顔も見られる事はなくなっていきました。

 

毎日のように面会に来る高齢の奥さんにも、ものを投げたり辛い口調で当たったりするようになりました。

 

そんな時、奥さんが私に、

「お父さんはね若い頃からお風呂が好きでね。大工だから自分で五右衛門風呂も作ったのよ」

と教えてくれました。

 

話を聞いて私は、そういえば状態も悪くなって、お風呂になんてもう何ヶ月も入っていない、お風呂に入れてあげたら痛みもも少し良くなるのではないか…と思いました。

 

そこで患者さんに声をかけました。

 

「お風呂に入れたらいいね」と。

 

すると患者さんは小さい声で

「風呂に入りたい。ゆっくり湯船につかりたい… 」

と言いました。

 

でも、こんな状態の悪い患者さんがお風呂に入れる訳などありません。

 

私は先輩看護師に相談し、先輩看護師が主治医にかけあい許可を取ってくれたので、入浴をさせてあげることになりました。

 

当時は施設が古く風呂場も広くはなかったため、ストレッチャーなどの器具を使用して入浴させることはできませんでした。

 

なので、私と先輩看護師で、患者さんを入浴室入り口までベットで運び、そこからは患者さんを浴室用の車椅子に移し替えて入浴介助しました。

 

湯船につかりたいというのが患者さんの希望でしたので、私と先輩看護師は白衣のまま、患者さんを抱えて一緒に湯船に入りました。

 

患者さんは大きくため息をつきながら

「気持ちが良い…気持ちが良い…ありがとうね」

と久しぶりに見る笑顔で言ってくれました。

 

支えていた私たちは思わず涙がこぼれました。

 

その患者さんはその数日後、亡くなりました。

 

奥さんはお葬式が終わった後、挨拶に病棟を訪ねてくれて

「最後にお風呂に入れてもらってよかった。お父さんはお風呂に入れたことをすごく喜んでいたんだよ」と話してくれました。

 

その話を聞いたときあの笑顔が私の記憶に蘇りました。

 

私が今でも看護師として働いているのはこの経験があったからです。

 

・このエピソードをお寄せいただいた方

性別:女性

年齢:40代

お住まい:鹿児島県
ご職業:看護師

勤務施設、診療科:総合病院の泌尿器科

勤務施設の規模(職員数):300人

 

看護師としてのエピソードをお寄せいただき、ありがとうございました。