私の祖父は、肺炎で半年ほど入院をしていました。
認知症も患っていたため、自己決定能力はなく、もう口から食事をとることは難しいと言われた時は、胃ろうをするかどうか、家族で悩みました。
しかし、その時はまだ会話が出来ていたので、胃ろうをすることを決めました。
しかし、繰り返し肺炎を起こしたことで、胃ろうから栄養補給をすることが出来なくなり、最終的には点滴のみになってしまいました。
点滴だけになってからは元気がなくなり、どんどん衰弱していき、面会に行っても目を開けていないことも増えて、私が声をかけても反応しなくなってしまいました。
「あー、そろそろお別れが近付いてきたな」と、とても辛く寂しく感じました。
そんな時、何度も呼吸が止まることがあり、病院に駆けつけることがありました。
その際に、看護師さんが
「今は落ち着いていますよ。しっかりアイコンタクトしてくださっていますから。」
と話してくれたことがありました。
実はこの言葉を聞くまで、私はこの病院にあまり良い印象を持っていませんでした。
と、いうのも、自分自身も看護師であるため、祖父のおかれた環境や身だしなみを見て「ちゃんとしてくれているのか」という不信感を持っていたからです。
この言葉を聞いた日には、何度私が声をかけても、反応しているようには見えませんでした。
しかし、毎日ケアをしてくださっている方には、祖父のアイコンタクトが分かったのだと思います。
これは、しっかり関わりを持ってくれている証拠です。
その後も、爪の手入れがされておらず、気になることはありましたが、このことも後に気持ちに変化が生まれました。
それから数週間後に、祖父がその病院で亡くなり、病院に駆け付けた時のことです。
葬儀会社の方がお迎えに来てくださり、ストレッチャーに乗った祖父の後ろについて、病院を出ようとしていました。
その時、それまで慌ただしく業務をしていたはずのその病棟の多くのスタッフが、手を止めて廊下に並び、祖父をお見送りしてくださったのです。
さらにエレベーターに乗り、病院の出口から出る際も、看護師さん達が数名、私たちよりも先に出口に立って待っていてくださいました。
霊柩車に乗り出発するまで、皆さんでお見送りをしてくださいました。
この対応は、朝の忙しい時間帯には簡単に行えることではありません。
それは看護師として同じように働いていた私には良くわかります。
しかし、この対応を見て、この病院のスタッフの方達は忙しい中でも患者さんやその家族に対して、誠意を持って関わる姿勢をしっかりと持った方達なんだなと感じることが出来ました。
このような形でお見送りをしてもらったことで、
祖父はこの病院でしっかり看てもらえていたんだな、
忙しくて細かい部分までケアをする余裕はなくても、出来るだけのことは誠意を持ってしてもらえていたんだな、
と感じることが出来ました。
そう思えたとき、この病院で祖父に関わってくださった方々に、心から感謝の気持ちでいっぱいになりました。
それと同時に、今まで私の中にあった不信感は消えていきました。
身内が亡くなった時、その時関わってくれた看護師の関わり1つで、最期のお別れの時の気持ちは本当に変わります。
祖父が肺炎で胃ろうをするか迷ったときもありました。
何度も繰り返す肺炎で、本当にしっかり看てくれているんだろうかと思ったこともあります。
しかし、この最期の対応でそういった気持ちではなく、
「この病院で看取ってもらえて良かった」
という気持ちに変わりました。
また、同じ看護師として今回のこの病院の対応は本当に素晴らしいと感じたし、今後自分自身が転職するなら、こういった最期のお別れの瞬間まで、しっかりと行うことができる病院が良いなと思いました。
・このエピソードをお寄せいただいた方
性別:女性
年齢:20代
お住まい:大阪府寝屋川市
感謝を伝えたい方:看護師
エピソードをお寄せいただき、ありがとうございました!